今思えば、前職の公務員を退職した理由のひとつは、「働く意欲をなくさないため」だったと思います。
職場でうまく立ち回れなくなってくると、自分の至らなさや能力のなさが身に染みて、自己肯定感はどんどん下がっていきました。月曜日が憂うつになるいわゆるサザエさん症候群は、いつしか土曜日から始まるようになり、やがて「もし仕事を辞めたとして、もう一度働こうという気持ちが起きるだろうか」と心配するようになりました。人生100年と言われる時代に、40代後半で退職してそのまま無職というのは、金銭的にも現実的ではないし、何より仕事をしないで生きるには、人生は少し長すぎる。
どのみち定年まで続けるのは無理だと、自分では分かっていました。2024年の夏、翌年の3月末で退職することを心の中で決めると、不思議なくらい気持ちが楽になりました。どんな嫌なことがあっても、次の3月まで。それでも当初は「正直、長いな。心がもつかな……」という気持ちでしたが、決めたことで何かが変わった気がしました。
退職に向けて、まず固定費を削ろうと、家賃の安い部屋を探し始めました。それまでは1LDKに住んでいましたが、正直自分にはそこまでの空間は必要ないと感じていたし、その家賃を払い続けるためにしんどい仕事を続けるメンタルの余力が、もう残っていなかったというのも本音です。退職後の生活を具体的にイメージしながら部屋を探すことは、不思議と自分のメンタルを安定させる材料になりました。年末が近づき、残り3ヶ月になると、どうにか持ち堪えられる気がしてきて、最後は開き直る感覚でゴールを迎えることができました。
4月を迎えたとき、私の中の働く意欲は風前の灯になっていました。
とりあえず、無職の期間を楽しむことにしました。また働くかどうかは、ひとまず置いておいて。やってみたかったことをひとつずつやってみました。甥をUSJのマリオワールドに連れて行ったり、ずっと行けていなかった東北へ行ってドラゴンアイを見たり、黒部ダムを訪れたり。もともと自分の部屋でのんびり過ごすのが好きなので、数ヶ月間をたっぷり満喫しました。
無職期間は、私的にはとても充実していました。ただ、自分の資産が少しずつ目減りしていくのがだんだんと気になってきて、夏を迎えるころには「そろそろもう一度働くか」という気持ちになっていました。働く意欲は消えかけたろうそくほどでしたが、完全には消えていなかった。それが良かったと思っています。
今も実家の仕事やコーヒーショップのバイトで、時には叱られながらも働くことができています。もし無理をして前職を続け、そのろうそくの火が完全に消えてしまっていたら——そう思うと、少し怖くなります。ぎりぎりのところで、自分の意欲をつなぎとめることができた。退職は、そのための選択だったのかもしれません。

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